必要なのは「組織として機能するために、最低限、何が必要か」を見極めます。逆に言えば最低限、すなわち下の6つのうちどれがかけていても、それは組織として不十分です。
1.目標をつくる
ピーター・ドラッカーは「組織は目的ではなく手段」「問題は、その組織は何かではなく、その組織は何をなすべきかである」としています。
「組織は戦略に従う」アルフレッド チャンドラー
これには組織づくりの本質が込められています。
特に小さな部門の管理職であれば、最も重要なのは「組織の具体的な目標」です。
ここを飛ばしてしまうと、後のプロセス設計や施策の洗い出しの時、単に現状を追認するだけで終わってしまうことがよくあります。
ISOでは3年間を目的とし、単年度で各部門や各分野で目指すべきものを目標として使い分けています。
なお「売上目標」や「利益目標」は「目標」という名前がついていますが、ここで言う目標とは違います。売上や利益は目標ではなく活動の結果だからです。
組織の長が考えなければならないのは
「何をすれば、結果として売上や利益が得られるか」です。
したがって「何をすれば」の部分を目標とすることです。
具体的には
- ◎今期は◯◯を◯◯の規模で行う
- 今期は◯◯の活動を行う。
- 今期は◯◯の地域の人々に◯◯を届ける。
※大企業でもないのに売上を目標にしている会社は、今すぐにそれをやめたほうが良い
という形で、目標を設定します。
また、目標はパフォーマンスを正確に測定するために
・組織全体の目標
・プロジェクトの目標
・チームの目標
・個人の目標
と、階層単位で設定します。
2.仕事のやり方をつくる
さて、もちろん目標を決めただけでは「組織づくりができた」とはいえません。次に必要なのは「仕事のやり方」です。組織づくりがなされている企業と、なされていない会社の大きな違いの一つは「属人性の有無」にあります。「この人しかできない」「あの人に聞かないとわからない」という仕事は極力発生しないようにするのが組織です。この作業により「社員の入れ替わり」に耐えうる組織が出来上がります。
属人性を排除するのに必要な「仕事のやり方」には以下の項目を含みます。
・業務フロー
・KPI
・様式
・マニュアル
・データの形式
・緊急対応、例外対応の方法
・記録の方法
・チェック、テストの方法
逆に言えばこういったものを整備しないで、常に「優秀なリーダー」、「スーパー営業」や「卓越したクリエイター」が必要とされる組織は、それがいかに大きい集団であったとしても、組織とは呼べません。
3.仕事の改善のしくみをつくる
目標と、仕事のやり方は決めました。組織であればこの2つは必須の条件と言ってもよいでしょう。そして次に必要とされるのは「改善活動」です。
改善活動は以下の活動を含みます。
・パフォーマンスの測定
・測定結果の報告
・報告されたデータの分析
・改善活動の立案、実施
・改善活動の効果測定
これらのプロセスを、仕事を実施する中で動かします。
これらには「機械化」「システム化」などによって、2人でやっていたことを1人でできるようにする、4日かかっていたところを1日でできるようにするなどの大きい改善から、様式を見直したり、仕事の手順を改善したりすることなどの細かい改善活動までが含まれます。
組織として機能していない状態では一人ひとりのノウハウが個別に運用されているだけですが、「組織」は誰か一人の良いやり方が全体に共有されます。この仕組みを作ることが「組織づくり」においては重要です。
4.キャリアパスをつくる
人材育成は「組織づくり」の大きなテーマです。そして「育成」というと教育や研修のことを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、組織づくりの最初に必要なのは教育や研修ではなく「キャリアパス」です。
キャリアパスには以下のことが含まれます。
・階層
・階層に応じた、必要とされるスキル、パフォーマンス基準の明確化
どのような人材を目指すのか、何ができれば一人前で、何ができたらリーダー足りうるのか、組織はそういった基準を必要としています。でなければ組織の不透明さに対しての不満が高まるでしょう。
逆にキャリアパスが存在すれば、必要な技能に応じて適切な教育や研修を適用できるようになり、人材育成もスムーズに運ぶようになります。特に技能の未熟な新卒や若手を多く採用するような組織は、キャリアパスの存在が非常に重要となります。
5.評価方法をつくる
ここまで来ると、組織に必要なことはほぼ作り上げたことになりますが、肝心なことを一つ残しています。それは「評価」です。
ここまで紹介した「目標、仕事のやり方、改善のしくみ、キャリアパス」を持つ会社は、ようやく「データに基づく評価」を行うことができるようになります。逆に、以上の4つが作られておらず、上司の恣意性が大きく反映される評価は、属人性が高く、「組織づくり」の過程において排除すべきことの一つであります。
評価についてはよく「うちの会社の評価は、結局上司の好き嫌いだから」という声が聞かれますが、それは単なる部下の愚痴であることも多いですが、大半は上の4つのいずれかがうまく機能しておらず、手元に評価のための十分なデータがないことに起因します。
6.文化をつくる
以上の1.〜5.は、主として組織のテクニカルな側面についての必要事項です。しかし、組織はそれだけでは十分に動きません。もう一つ重要なのは、構成員のモチベーションやマニュアル化されていない事態への対応に必要となる「文化」です。
組織の「文化」は、主として以下の要素のどれか、または組み合わせにより従業員に伝達されます。
・組織の長の人格・行動・発言
・理念や判断基準
・評価基準
・顧客への態度
・報奨制度
でも、影響が大きいのはやはり組織の長の人格・行動・発言でしょう。
場合にもよりますが、以上見てきましたように「組織づくり」は、高度な非定型業務には向いておりません。そもそも新規事業やビジネスモデルの設計、イノベーションの促進などの非定型業務は「組織」が行うものではなく、卓越した「チーム」が行うべきものです。
チームが事業の芽をつくり、組織がそれを大きくする、という流れを企業の中でどのようにつくるか。ここが経営者の手腕が問われる部分です。
そしてこのような「組織」を構成する「人」を採用する活動が必要です。
たとえ完全でなくても、この6つの要素を備え、見直し、整えてゆこう、という意思を経営者が示していることが、採用募集の必須条件となります。特に「文化」を伝えることが最も大切です。
むしろ、整っていない要素を一緒に作りませんか?という問いが究極のリクルーティングかもしれません。